症例12
主訴:
多発性膿瘍の疼痛 咀嚼不全
20歳 男性
数年前より歯肉腫脹、出血を自覚し、頻繁に治療を受けていたが、ほとんど全額抜歯と言われ、保存を希望し転医、来院した。
動揺度はいわゆる舞踏状である。
含嗽、ブラッシング指導、Oral physiotherapyなど、 Initial preparationの諸科目および永久固定によって、口腔衛生の保全と全身的・精神的衛生の保持を良好に制御しえた。
このような極度に進行した症例には、外科処置は不可能。
かといって、抜歯→義歯の図式はこの若年患者には酷である。そこで生活全般に対する改善を、患者の受け持ちとして、治療に協力する約束で、自然良能賦活療法を主とした治療を進めた。
大学入試に失敗し、落ち込んでいた日々も、歯肉の健康を取り戻すことによって自信もつき、別人のごとくたくましさを取り戻した。
治療経過のなかで、40日後の(写真4)の状態は、炎症が沈静し、腫脹もほとんど消退した。しかし、歯肉の形態は正常ではない(おそらく歯槽骨の形態も)。
一般には外科手術による整形をしなければ、この形態そのものが再燃再発、悪化の原因になると言われている。
しかし、自然良能賦活療法が適正に行われていれば、経過観察の期間をもっと長期間にすべきである。
そうすれば、見かけ上の治癒から本来の治癒への変化を確認することができる。9ヶ月後(写真5)の状態では、一部歯周ポケットは残存し5mm程度の深さで残っている。
歯肉の形態も、変形が甚だしい。
しかし、整形手術を加えれば、より一層の歯肉の欠損は進む。6年半(写真6)では、歯肉の形態がほとんどの場所で修正され、歯肉の退縮、後退量も少なくて、歯周ポケットはほとんど消失した。
このことから、重度歯周疾患治療における諸種の外科処置は全く不必要であることが立証される。初診より2年後の定期健診後、渡米し6年5ヶ月後、帰国直後来院したのを最後に、再度渡米し、現在アメリカで市民権を得て活躍中である。
12. 初診
13. 19日後 20歳
14. 40日後 20歳
15. 9ヶ月後 20歳
16. 6年6ヶ月後 26歳17. 初診
18. 9ヶ月
19.~22. 4ヶ月永久固定装置の合着前
レントゲン写真
初診時 20歳
1ヶ月後
9ヶ月後
6年6ヶ月後
上 1年11ヶ月後
中 2年4ヶ月後
下 6年6ヶ月後
16年後、アメリカからの報告
1982、初診から16年後、アメリカからX線写真などが送られてきた。
ポケットが、7mm、5mmのところもある。
しかし、再燃再発もなく16年経過している。生涯の最善の方針を立てて、その中で今出来る最善は何か?
取り返しのつかないことにならないか?
時間のリミットに迫られて「決断は困難」である。
しかし、どんな場合も「患者の生涯のため」に
よく聞き、調べ、話し、納得づくで決めるしかないと思う。症例13
主訴:
歯痛、咀嚼不全、欠損補綴
初診 昭和38年 37歳 男性
右上23根端病巣からの発痛で来院。
上下顎前歯部の抜歯の不安と義歯装着によって、不快な思いをするのではないかと心配し悩んでいた。
1.~3. 初診 1963.8 38歳歯周病治療における患者の受け持ちとしての自然良能賦活療法、治療後の再発防止のための病因除去の励行のための生活改善の努力が必要であることを理解し、治療の協力を約束した。
4. 1963 38歳 初診から13日後
5. 1963 38歳 3ヶ月後
6. 1965 40歳 2年後
7. 1968 43歳 5年後
8. 1969 44歳 6年後
9. 1972 48歳 9年後10. 1975 50歳
11. 1977 52歳
12. 1977 54歳
13. 1981 56歳
14. 1983 58歳
15. 1985 60歳一般的なブラッシングによる口腔清掃は守られていたが、初診時5mm前後の歯周ポケットが、前歯部・臼歯部・各歯牙に存在し、排膿も著名であった。
今までの不十分な点を納得し、完全に改め、食生活などの改善も着々と進み、28年を経過するが再発はほとんどない。外科的処置は一切行っていない。
だがポケットは1〜2mmの状態を保っている。
初診時歯肉、歯槽骨の形態はもっとも改善が難しい状態であった。しかし、老化が進む年齢にもかかわらず、年々歳々良好な形態に改善されている。
16. 1986 61歳
17. 1987 62歳
18. 1988 63歳
19. 1989 64歳
20. 1991 66歳21. '63 38歳 初診から13日後
22. '63 38歳 3ヶ月後
23. '68 43歳 5年後
24. '69 44歳 6年後
25. '72 47歳 9年後
26. '75 50歳 12年後
27. '79 54歳 16年後
28. '81 56歳 18年後29. '83 58歳 20年後
30. '85 60歳 22年後
31. '86 61歳 23年後
32. '88 63歳 25年後
33. '89 64歳 26年後
34. '91 66歳 28年後35. 1963 38歳 13日後
36. 1963 38歳 3ヶ月後
37. 1968 43歳 5年後
38. 1969 44歳 6年後
39. 1972 47歳 9年後
40. 1975 50歳 12年後
41. 1979 54歳 16年後
42. 1981 56歳 18年後43. 1983 58歳 20年後
44. 1985 60歳 22年後
45. 1986 61歳 23年後
46. 1988 63歳 25年後
47. 1989 64歳 26年後
48. 1991 66歳 28年後X線写真
初診から26年後まで
右下小臼歯部」
右下大臼歯部
初診から18年後
22年後
症例14
永久固定とK.K.K装置
主訴:
咬合咀嚼不全
昭和41年 55歳 女性
若い時から何度も修復補綴処置を受けていたが、何度やりかえても再発や破損で悩み抜いた。
総入れ歯にしないでほしいと来院。
写真:初診 1966. 7下顎残存歯すべてを保存。
低溶融銀合金を使用したワンピースキャストのフル・ビリッジで固定。7. 8.
9. 10.
11.12.
13.14.7. '66.06 55歳 8日後
8.~10. '66. 8 55歳 1ヶ月後
11.~14. '67 56歳 10ヶ月後15.16.
17.
18.19.
20.21.15. '66 55歳 8日後
16.〜20. '67 56歳 10ヶ月後
21. '70 59歳 4年後22.23. 1972 61歳 6年後
22.23. 1973 62歳 7年後
27.28. 65歳 11年後
29.30. 66歳 12年後 (写真右:形態修正後)
31. 69歳 14年後32. 71歳 16年後
33. 70歳 15年後 形態修正前
34. 形態修正後
35.36. 形態修正
37. 形態修正後38. 71歳 16年後
55歳
59歳
65歳
66歳
67歳
70歳
初診から6年後 1972
新製した義歯